Vol.49 ◆毛利元就の「“まさか”の坂」に身震いする現代人◆
今年のNHK大河ドラマ『花燃ゆ』も終盤にさしかかり舞台は山口県から群馬県に移ったが、今回は長州藩(現在の山口県)を治めた毛利家の中で最も知名度が高い戦国武将・毛利元就(もとなり)の『人生には三つの坂あり、上り坂と下り坂、そして“まさか”の坂』の言葉を取り上げることにした。
祝宴などの挨拶で引用されることも多く一度は聞いたことがお有りかと思うが、この言葉は元就が「厳島の戦い」で奇襲を仕掛ける前に家臣を叱咤した言葉として、今でも中国地方に深く印象付けられている。
誰しも日常生活で“まさか”と思う色々なケースに直撃するものである。
緊急を要する事態に遭遇した時に下す自己の判断により、その後の人生を押し上げるか押し下げるか、多くの現代人はこの“まさか”という状況で震えている。
先々の不幸ばかりを考えて何もしないのは、その方が不幸だとの古人の言葉もある。しばし立ち止まり、「自分に慢心や油断はないか」「今できる最善の策は何か」と考えようとする気の持ち方が大切である。
元就は兵数で劣る不利な状況で大嵐の夜に船出して奇襲攻撃を仕掛け陶(すえ)氏の大軍を打ち破ったが、「“まさか”は敵にも味方にもある恐ろしい坂では」と話し合った故郷島根県の旧友である松本泉氏(元毎日新聞松江支局長)との巷談が懐かしい。
また、1997年放映のNHK大河ドラマ『毛利元就』の第41回「奇襲厳島」では、この『人生には三つの坂あり・・・』の言葉を大切に解説してくれた記憶もある。
巻末に触れておきたいが、毛利元就のこの名言を総理任期中の選挙時に引用したのが小泉純一郎氏で、今では報道機関の多くがこの名言を“小泉説”と誤認して“毛利思想”を度外視し無視する愚行には本当に困ったものである。
15010-49