Vol.3◆「安全」と「安心」は同じじゃない
消費者庁行政が本格化しようとしている昨今、「安全、安心」が当たり前となり、誰もが生活する上で「正義は我にあり」なんていう世の中となった。そもそも、仮に最先端技術の粋を集めた装置でも、ボタン一つで快適な生活を保証する器具でも、当然ながら落とし穴は多いと思っておいたほうがいい。だから利用者サイドが「安全性」を鵜呑みにした結果、その「安心感」はとたんに「危険感」に急変することもしばしばだ。
本来、「安全性」とは医科学のデータをベースにした基準であって、「安心」とはこの安全性で裏打ちされた結果から納得した信頼感で成り立つとされている。だから「安全」と「安心」は厳密には同床とか同じ思いの恋人同志ではない事を知るべきだろう。
つまりメーカーや販売会社サイドの言葉で話す「安全性」と、受け手サイドである消費者が「安心」を理解し信頼するまでの言葉や言い回しは実は微妙に違う点があるのをわかってもらいたいのだ。
たとえば、各種製品には「取扱い説明書」がある。生活とか衛生問題で発生する事件の多くがこの「取説(とりせつ)」に対する消費者サイドの理解不足だろう。しかし分厚い「取説」に難解な言葉を並べるメーカーサイドの気配り不足も目立つことが多い。おまけに消費者サイドにこれを指弾する機関は皆無に近いと思う。
ごちゃ混ぜでご都合主義の「安心・安全」感覚の辿りつく先は、不満と危機意識の一人歩きに警鐘を鳴らすことになる。
それを解決するには、まず適確な「安全基準」を冷静な目をもってデータで示し、受け手サイドはその「安全」について真摯に理解し学ぶことで真の信頼が築けるわけで、“消費者庁が何かやってくれる”だけの期待感は捨てた方がむしろ無難だろう。寄っかかり精神で慣らされている現代人にはむしろ手痛いしっぺ返しが待っている様にも思えるのだが。
今月も先月に引き続き、ちょっと難解な話になってしまったわけだが、残暑にあえぐ頭を活性化するためにも、ちょうどよいのかな?と、思うこの頃である。
では、また。
(0908-003)