Vol.31 ◆白菜の浅漬けによる食中毒死亡事件を身近な事件として捉えよう
この盛夏の8月、北海道で白菜の浅漬けによる腸管出血性大腸菌O-157の食中毒が発生し、17日までに道内の高齢者施設で100人以上が発症し、7人が亡くなった。その中には4歳の女児も含まれているという。
痛ましい事件ながら、水周辺の衛生管理に携わる者として、野球に譬えて三遊間に打球を抜かれたような痛烈な失態感が強いのは何故か?
水衛生管理に対する安易で甘い危機意識が、そこここに見え隠れしている。
この事件で感じることは、
@まず、平素は予測し難い野菜が原因の食中毒であることの驚き。
A白菜の浅漬けの製造時に、加温処理されない漬物業界の作業習慣。
B“減塩”食習慣の推進気分が消毒意識を削ぎ、ヌカ漬けやキムチ類の発酵による菌の死滅とは無縁の感覚。
つまり、肉や魚の食中毒に比べると、確かに野菜の食中毒は稀有だ。
しかし、野菜だからこそ新鮮さを強調する上で、洗浄回数だけでなく、消毒液樽に浸す手順なども必要なはずだ。
多くのケースがそうであるように、今回も死亡事故が起きて初めて行政の立ち入り検査があり、道内の550施設が対象となったが、白菜に限らず浅漬け類には塩分基準も、野菜洗浄基準も不在の実態もあった。
ここで触れたいのは、日々の新鮮な野菜であっても、その衛生管理によってはO-157の存在があり、新鮮な状態にこそ、落とし穴があるということである。
今回の野菜の食中毒事件のニュースに、欧州の各国は敏感に飛びついた。 浅漬けを好むロシア人にも、“Voice of Russia(ロシアの国営放送局)”の異常反応とも言える報道にもそれなりに驚くだけでなく、衛生管理の欠如により浅漬けにもO-157が存在するという怖さを実感しているからこその報道であったと見た。
実は欧州ではこの夏までに既に、浅漬けによる食中毒で50人以上が死亡したことを報じており、その辺の危惧を感じていることも参考にしたいものだ。
それにしても、ご飯に漬物と味噌汁という伝統的な食文化で育ってきた筆者としては、今回の事件による風評で、日本の食卓から漬物が消えないよう、願うばかりだ。では、また。
(1208-031)