Vol.2◆朝顔のつる
盛夏の庭に咲く朝顔は絶品だ。童謡詩人・金子みすゞの「朝顔の蔓(つる)」という詩の、“垣がひくうて 朝顔は、どこかへすがろと さがしてる”に、つい子供心に帰ることが出来る。
私の家の小庭には毎朝50個もの朝顔の花を付けるが、今夏、この老学者は思わぬ朝顔のつるの行動に出くわした。朝顔は高さ1メートルの杖を昇り詰めると、そのつるは空中に25cm程垂直に伸びる。更に伸びるためその先の15cmは直角に横に曲がり、都合40cmが空中で懸命に耐えていた。さては“すがる”縁探しか? 真夏の日差しの元、気温30℃、朝10時、無風のなかでの、僅か10分間の出来事だったが、先端15cm部分を正確に水平に90度の範囲で左右にゆらゆらと揺れて、その後力尽きたのか、先端を丸め活動を終えた。
植物は栄養豊かな土と太陽の恵みなどで育つ。ところがこの朝顔の成長には人間の成長発達に似た動きがあることを発見してしまったのだ。つまり成長する上で補助的に支援する独特な行動学(ethology:エソロジー)だ。人間は栄養・休養・運動の3要素で成長が約束されている。この人間の“運動すること”で体の筋肉や運動機能を高め、脇役として成長を助けているのだ。
キュウリが育つときの脇から伸びるつると違い、朝顔は1本のつるで勝負する。このつるが豊かに、大きく巻きつける姿を垣間見、驚嘆させられた夏の朝だった。
植物は土に棲む微生物の死滅、増殖、変動の繰り返しで生み出される栄養をその根に供給し成長する。だが、植物がつるを伸ばし自らの成長を促し勢力を拡大しようともくろむ行動についての説明は殆どない。
同じことが水組成にも伺える。水の浄化理論には、分子レベルの物理化学から生じる現象を見ると、主として酸化とか吸着、イオン交換反応など高度な浄化現象がある。生物学の一原理にある行動学(エソロジー)と同様、水の持つ特性も外部からの作用に奥深い対応力が見られ、その働きにこれからも期待したいものだ。
今回は朝顔の話からいささか難解な話へと展開していったわけだが、猛暑続きの夏でボーッとした頭を活性化するためにも、たまにはこんな難しい話をするのもよいかな? と、思うこの頃である。
では、また。
(0908-002)