Vol.21 ◆-阪神・淡路災害の教訓が活かされなかったか?-
“常用医薬品”服用被災者動態と、
明示すべき被災現場に残したい開業医の連絡先
今回の東日本大震災に被災された方々にお見舞い致し、また不幸にして身内の方を失った方々に心よりお悔やみ申し上げたい。
さて筆者は平成7年1月の阪神・淡路大震災の折、震災発生1ヶ月後の10日間、神戸二ノ宮の被災者約3万人を神戸クアハウスの発案で入浴施設を無料開放し、その安全管理に医師2名、看護師2名と健康運動指導士3名を引率して支援した経験がある。当時、報道TVの過剰な取材、行政の対応の遅延で、役所や保健所職員と異常なギスギスした関係が持続しメディア調査や役所の健康調査は被災者代表から拒否され、ボランティアの立場にある我々保健医療関係者にとってその健康調査について苦慮していたのも事実だった。
幸い、神戸クアハウスに毎日約2,500名が10日間で約30,000名の入浴を安全にサービスでき、被災者代表と大西清太同クアハウス社長へお願いし、被災1ヶ月後の健康調査を1,200名対象に了解してもらい、結果は厚生省、行政、保健所、日本運動生理学会大会において筆者が発表した。
その阪神・淡路大震災調査の大切なポイント内容は①被災後1週間で41.8%が常用医薬を服用していないこと、②不眠傾向が強く、浅い眠り(65.9%)、うとうと(15.4%)、すぐ目覚める(32.3%)、③健康状態は自覚症状で風邪気味(49.5%)、だるい(41.0%)、便秘(30.8%)頭痛(21.9%)めまい(16.2%)など、④被災者の要求は食べるもの→暖かいもの→入浴が三大欲求。調査では特にテント被災者を訪れて調査したところ、その多くがかかりつけの開業医の連絡場所について被災現場に案内標識を立てて欲しいとの要望があり、この要望には学会の強い賛意が示された。(“常用医薬”とは血圧降圧剤など服用時間により生命にかかわる薬剤で、いわゆる“常備薬“とは別なもの)
ただ、残念ながら以上の阪神・淡路大震災の教訓は今回の東日本大震災には活かされていない事を痛感し、この課題は再度関係者の反省点として今後に繋げたい。
なお本調査報告に関心のある方は水利協窓口まで問合せください。
(1104-021)