Vol.33 ◆豪華船も最新ジェット機も“揺れる場所”ほどお高い料金の怪?
筆者が幼少から今日、そしてまた今後も熱中している観光行動に「観光船旅行・クルージング(Cruising)」がある。空、陸、海を旅する上で、空ほどの近代化はないが、陸ほどに喧噪さもなく、人類歴史に観光船ほど素晴らしい旅行は他にないと筆者は信じている。
理由は簡単である。
@世界で一番デラックスな旅行形態で、最高は1,000万円以上のコースもあり、事実、世界一周で平均が一人200〜300万円。外国でも人に話すのに「クルーズを楽しんでいる」と答えると、その反応が面白い。
断っておくが筆者のそれは3〜4泊程度の大衆料金範囲である。
A泊まりは豪華客船で荷物の心配はゼロ。
B船は豪華そのもので3万トンから5万トンで、少々の波にも平気。
C食事は和・洋風交互で、味も抜群。
D船が寄港するごとに地元の若い人の歓迎を受ける。
E60〜70歳の元気な高齢者が多く、話好き人種が多い。
F豪華客船の操縦室は原則公開され、機械好きの人には最高。最近の船には5m程の左右に翼があり揺れを防ぐ(スタビライザー機能)等、話題は豊富。
明治の初めより豪華客船旅行はゆったりした旅程、豪華な雰囲気、個人生活とグループ行動の選択が確立している。そして、乗り合わせた数百人相互が親しめる雰囲気がある。
毎年でなく3年に一度、日本周辺回遊コースが筆者の好みで、世界文化遺産関連都市とか観光地を訪れるのが楽しい。
費用は懐具合で十分調整可能である。昔のようなキャビンクラスの王様気分と船底船客の扱いの差はなく、相応であるのが楽しい。お金持ちはそれなりに、そうでない人もそれなりにが、まかり通る世界でもあり、それが愉快である。
筆者は『にっぽん丸』(約3万トン)を愛好している。
この船の客室は、一番安い船客料金から予約が埋まるようで、戦前戦後、世界のクルーズ観光を手掛けてきたJTBなど、船会社もサービス・スタッフも従来の系統が現役として健在だし、お客の気持ちにも昔なみの配慮が嬉しい。
クルーズの楽しみ方は、船内での各種の講演、音楽会、手芸、趣味などイベント参加と寄港地周辺の観光と土地の特別料理など様々である。
ところで、豪華客船でも豪華ジェット航空機でも愉快で不可思議な思いがある。それは料金制度だ。
いずれも料金が高い席と安い席の違いの面白さである。より高価であるためにはそれなりのメリットがある筈だが、この2つの輸送機関に可笑しさと不思議さがあり過ぎると思えるのである。
戦前も今も、豪華客船では操縦室と同じ階層で船を全部見渡せるデッキの最高層にあるのが、判で押したようにキャビンクラスである。観光の眺める視野からはそれも道理だが、揺れる度合いとなると船の専門家も沈黙する。船には波がつきものだが、専門家も船底の方が揺れは少ない筈と答える。断っておくが、筆者の愛好する客室位置は、寄港するたびに出迎えてくれる人達と同じ目線、すなわち丸窓から眺められる名誉ある目線にあたる1〜2階である。
もっとひどいのが旅客機の世界だ。戦後間もないプロペラ機時代の特等席は後部端だったが、ジェット機化でファースト・クラスは一斉に機首に移動したのが公知の事実だ。つまり、プロペラ機時代の機尾部分とジェット機時代の機首部分は共に一番ひどく揺れる所だ。
最新のジェット旅客機や豪華客船の会社も高額料金を払う人も共に“揺れる場所”がお好きと見える。酔いたいのかなとつい思ってしまう。であれば、大衆料金に親しみを持つ筆者らの層には神様の思し召しが多いのではと感謝もしたい。目的地到着時間は一緒なのですぞ!・・・。
自称愛妻家の筆者にとっては、夫婦水入らずの船旅は何事にも代え難いひとときである。次回の旅が今から楽しみだ。では、また。
(1301-033)