Vol.15◆古代ローマ人と現代日本人の入浴好き談義
今、ヤマザキ マリ著のコミック本“テルマエ・ロマエ“を若者並に熟読している。
内容は古代ローマ人ルシウスがこよなく楽しんでいるローマ風呂の入浴風景から、現代日本の銭湯や湯治場にタイムスリップして、入浴習俗の違いを探り、それを古代ローマに持ち帰り、大繁盛させるという内容だ。基本的に、古代ローマ人と現代の日本人とは温泉に対する情感に違いがない事をコミカルに取り上げているのが面白い。書店員の選ぶマンガ大賞2010に選ばれた本でもある。
ネロを初めとして歴代皇帝がその悪名の高さの度合いに応じ、競って豪華ローマ風呂施設を大衆に与えたかなど史実に基づく話題も豊富なマンガだ。
著者ヤマザキ氏が調べた古代ローマ人の入浴行為の動機発見が面白い。ある皇帝は自分の宮殿浴場より広くて大勢入る大浴場を愛したこと、皇帝も一緒に市民や奴隷とともに入浴したこと、裸の付き合いから衛生、快適感の他に身分を越えて解放感や平等感が基礎にあったこと、高・低・真水の湯温確保のメンテ費用に入場料をとったが奴隷も払える程度であったこと(現代風には100円でなく10円程度か)、蒸し、飲泉、オンドル等火山地帯の熱利用により、リュウマチなど内分泌系の入浴効果も施していたこと、などイタリアの地方に点在する遺跡から情報を集めている。ルシウスが見た現代日本人の入浴法比較では、アカとりだけでなく脱毛手入れ用の金属製ベラ・ストリジルで済ますに比べ日本の浴用石鹸の泡に驚く様、環境を度外視した浴剤社会を風刺もしている。浴室トイレのシャワーレット洗浄に、“一体何人の奴隷を雇っているのか?”とする問いにウイットも感じられる。
幼少の頃より“漫画は教育上よろしくない!”と諭した教育者の両親の言葉が懐かしい。だが端正な表現と美しい描写に漫画の魅力の一端を今考え直している。
それにしても、古代ローマ人同様、私どもも家庭の風呂より大きな湯船でいつでも入れて、ゆったり気分で楽しむ、“温泉”などは最高に人気だが、庶民の憩いの場“銭湯”はもっと頻繁に利用するべきだ。ただ、一浴450円が高いか低いか、ルシウス君にソット聞いても見たい。
(1010-015)