Vol.13◆衛生管理制度の狭間で放置されている「足湯」の危険性
今、都市型、リゾート型を問わず温泉地で流行りの「足湯」に注目したい。
温泉地で足先だけでも、誰にでも手軽にしかも無料で温泉気分が楽しめる「足湯」は庶民に人気が高い。そこを訪れる旅行者に対し、温泉地に有りがちな無関心を装う地元住民のそっけない態度でなく、「足湯」の利用は多くの住民同志が語りあう他、旅行者と分け隔てなく双方が気軽に交流している風景は美しい。
ただ、折角のこの施設利用ブームにもレジオネラ属菌の直撃が多発し、放置できない事態が起きている。登別温泉、四日市等、かなりの足湯施設が一般の入浴施設で発生した菌数と同等かその数十倍を超えるレジオネラ属菌に汚染されている。その原因には縦割り行政、施設管理者の認識の甘さ、利用者のレジオネラ属菌に対する知識不足、そして衛生管理原則の不在だ。
「足湯」から発生したレジオネラ属菌発生の事件は、鹿児島県のあるJR駅前の「足湯」を清掃消毒した中年男性が、肺炎を発症しその原因が検査結果により、この「足湯」の細菌と同じものと判明した。マスクを使用しない安易な清掃方法と装具で吸い込んだとみられ、足湯の汚染認識の甘さが指摘された。
すでに、多くの国民からこの「足湯」施設の衛生とレジオネラ属菌発症原因を助長する危惧について質問が出ている。これに対する島根県等の衛生保健行政担当部局からの回答は検査と清掃の徹底を示してはいるが、無料で使用できる「足湯」施設の法規制の不備をも指摘している。
他方、群馬県みなかみ町の「みなかみ温泉足場及び管理に関する条例・20.4.1」が縦割り行政の悪弊を補正する方法として、地方自治法の指定管理者にその管理運営を担当させている。
それにしても、温泉露天風呂を最大の清掃ターゲットとしている現在、街路や露天空間の土壌菌であるレジオネラ属菌によって一番汚染されやすい筈の「足湯」こそ問題だ。行政の目の届かない「三遊間」を抜かれ、そのうち取り返しのつかない惨事が起こることが十分予想される。レジオネラ属菌は行政のアミを全然気にしていないのだ。
温泉気分が安直に、しかも楽しく歓談できる「足湯」は私も大のファンだ。しかし、それも適切な衛生管理が前提であり、市民による安心・安全の徹底と行政配慮は必須条件だ。
それはともかく、異常な暑さの夏、真っ盛り。休みの日には、冷たいビールでも飲みながら高校野球でも見たいものだ。高校球児のひたむきなプレーのごとく、温泉業界に関わる者のひとりとして、衛生思想の普及のため地道な啓蒙を続けていかねばと思う今日この頃である。
では、また。
(1008-013)