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Dr.イワサキ

Dr.イワサキプロフィール
岩崎輝雄(いわさき・てるお)

1933年島根県松江市生まれ。協会監事・学術部会代表/北海道大学 健康・予防医学 教育学博士/健康評論家。
温泉健康法として「クアハウス」、森の健康法として「森林浴」を発案、企画・運営指導に携わる。その間、一貫して厚生省、農水省、環境省の補完事業を担当。レジオネラ菌対策、シックハウス対策にも係わっている。
著書に「温泉と健康」(厚生科学研究所)、「クアハウスの健康学」(総合ユニコム社)、「森林の健康学」(日本森林技術協会)などがある。

Dr.イワサキの今月の水のお話し
協会のご意見番「Dr.イワサキ」こと岩ア教授が、ちょっと気になること、不思議に思うこと、愉快な出来事などなど、毎月楽しい内容をお話ししていきます。

Vol.23 ◆東日本大震災にご遺体捜査に奮闘する隊員らを保護すべき衛生装備基準の不備を問う

 未曾有の東日本大震災は被災者の物心両面に多大な被害と損傷を与えた。 
 多面的に高度経済成長を謳歌した大量消費と贅沢三昧な生活の中にも、日本人が手放してはならない、他人を大切にする心、想い合う心、もったいないの心、家族の絆、家族隣人の和の心等などがある。この大震災の復興事業においても、被災者と支援家族、そしてボランティアの若者の間に劣悪な環境のもと、汗をかいてのみ達成できる瓦礫処理作業を通じ、これらの手放してはならない貴重な至宝を国民は再び手にした思いだろう。
 私達には辛い経験だが大震災からの偉大なる教訓とも受け止めたい。
 筆者は災害発生直後、日頃より汚濁微生物の殺菌、消毒等衛生管理の現場指導をしてきた経験から、消毒薬、脱臭剤を被災地現場で作業している消防署員、自衛隊隊員に直接配布すべく、多くのボランティアグループを送り出し、彼等に現地活動の支援もした。主な訪問箇所にはご遺体安置所もあった。
 “この大震災の貴重な経験”の報から、到底無視してはならない点が多く、それを3つの視点に絞り報告したい。
 第一に震災直後でもあり、瓦礫や汚泥処理を行ないながらの長期間にわたるご遺体捜査現場だが、特に汚泥上での消防署員、自衛隊員の汚泥中の衛生装備の不備だけでなく、作業後の手足や衣服の消毒施設は少なく、消毒剤配備も不統一どころか日がたつに連れゼロとなっていった。
 第二に腰まで浸かる捜査作業に汚泥専用のゴム作業服、ゴム手袋の予備もなく、これら係員の宿舎は死臭が漂う現場だったこと。緊急用洗浄、洗濯器具は無配備だったとか。
 第三に被災直後の被災者への緊急食糧備蓄等、一定の保管基準はあっても、消防署員や自衛隊隊員の皆さんが腐敗の始まるご遺体搬送を直に触れた後の身辺消毒システムの不在だ。
 現場においては、コレラ菌等の発生も危惧される劣悪な環境に、衛生知識を熟知しているはずの現場作業隊員に、単純に予算不足で政府・自治体もそして熟視する国民サイドもこの放置や不在の言い訳を絶対に是認してはならない。緊急救助用衛生器具薬品配備基準は必須なのだ。
使命で活動する彼等に対する政府も国民にもその衛生的配慮の不在を嘆くのだ。日頃衛生管理に携る多くのこの若いボランティアの声だからこそ、この事象に驚愕を通り越し、怒りを感じたと報告を受けた。早急な対応を望みたい。

(1108-023)