Vol.39 ◆日本の田舎町を愛したイギリス人女性紀行作家「イザベラ・バード」の日本観に思う
日本が世界に近代国家育成を意識し始めた明治初期の頃、イギリスの女性紀行作家イザベラ・バード(Isabella Lucy Bird)が日本の田舎を大規模に取材し、日本民族について緻密に描いた紀行文が発表されている。
彼女が纏めた“Unbeaten Tracks in Japan”-日本奥地紀行-は、イギリス人でしかも女性の立場から見た民族評価の真実性と公正な記述が高く評価されている。
東京を起点に日光・新潟・秋田・北海道の北日本や、神戸・京都・伊勢・大阪の関西地域の田園を結ぶ旅ルートで、日本の地方をテーマに2巻に纏められており、私も原文で接している。
地方の歴史、文化、衣食住、風習、生活習慣などの実態について、乗馬という足で稼いだ記録が残されているが、記述内容には教養や国土の程度の差などについて、正直で真実な表現評価により纏められており、当時の常識とか素直な真実表現の史実価値は高いと私は評価している。
彼女は、どんな過疎の田舎でも自分の足で行き、直接そこに住む人たちと語り合い、記録に役立つ情報を自分の手で丁寧にメモしていたとの記録が“とある旅の地”にあったのだ。
その地とは、私が地域の温泉健康づくり事業を指導してきた三川・津川温泉がある阿賀町(新潟県)である。 長野県から新潟湾に注ぐ大河の阿賀野川がこの町を流れており、かつては新潟県と山形県の接点であることから、文化交流路の頂点を位置した歴史もある。
イザベラ・バードは東京から新潟への道々、この津川温泉で宿したようで、この山岳の渓流地・阿賀町を取材の基地にしたとの話を土地の文化文芸に詳しい阿賀町町長の神田敏郎氏や土地の長老から聞いた。
およそ200年前の支那や朝鮮の人々の生活実態を詳録した多くの論文を著した彼女が、その隣地である日本で過ごして取材し、日本人の英知と素朴さに満ちた姿を日本独自の国民性と捉え、感銘した歴史評価に、私は注目しまた彼女から学ぶところが多いことに驚く。
それにしても、今年の冬の到来は早いようで、津川温泉にも雪が積もっているようだ。イザベラ・バードへの思いをはせて訪ねてみたいと思いながらも、「やっぱり我が家の風呂が一番」なんて思う今日この頃である。ではまた。
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