レジオネラ症の「ヒト‐ヒト感染」が疑われる症例/ポルトガル
ポルトガルの研究チームが医学雑誌「New England Journal of Medicine」誌上においてレジオネラ症の原因菌であるレジオネラ属菌による「ヒト-ヒト感染」が疑われる症例を報告した。これまでのケースでは、人から人への感染事例はなかった。
この症例は2014年に発生したもので、ポルトガルのリスボン郊外のビラ・フランカ・デ・シーラ(Vila Franca de Xira)にある工場の複合冷却塔施設で働く48歳の男性整備工とその母親である。
男性は汚染された複合冷却塔建造物で働いた後、レジオネラ菌に感染した。
2014年10月11日、冷却塔のある工場から約190マイル(約300km)離れた都市・ポルトの自宅に戻った彼は、74歳の母親と共に暮し、約3日後に病気の兆候を示し始めた。19日には激しい咳などの呼吸器症状を呈していた。その夜、男性が入院するまでの8時間の間、母親が看護していた。
男性の発症から約2週間後の27日には母親にも症状が現れ、11月3日に肺炎による敗血症性ショックのため入院となった。 母親は12月1日に、男性も翌年1月7日に死亡した。
検査により、いずれからも、男性の職場に起因するアウトブレイクの原因菌となった菌株と一致するレジオネラ(レジオネラ・ニューモフィラSG1)が検出された。しかし、母親はリスボン近郊の感染地域を訪問したことは全く無く、この例は「恐らく人から人への感染したことが疑われる」と、研究チームは結論づけた。
親子の家は空調機や加湿器のない小さな密閉された部屋であり、家から採取された水試料からレジオネラ属菌は検出されなかった。
初めて「ヒト-ヒト感染」が疑われたレジオネラ症の事例は、親子が換気の無い狭い家の中で長時間密接な状況で過ごしたための結果であろうとのことである。