ニューヨーク市最大のレジオネラ症アウトブレイク―死者12名/アメリカ
【7月29日】ニューヨーク市サウスブロンクス地区で7月10日以来レジオネラ症が発生し、サウスブロンクス地区の住民31名の感染が報告され、うち2名が死亡した。市保健局はアウトブレイク(集団感染)の原因となった冷却塔などの感染原因を調査中。
【7月30日】市当局はサウスブロンクス地区で46名がレジオネラ症に感染、2名が死亡したと発表。 感染者は以前の報告より15名増加した。「今回の拡大の感染源は分かっていないが、ここ数か月の間、冷却塔に関連した感染拡大があった」と市保健局長は語った。局長によると、これまで市が調査したサウスブロンクスの冷却塔のうち、2箇所で陽性の結果が出た。1箇所はリンカーン病院で、もう1箇所は民間商業スペースで映画館なども入るコンコース・プラザであった。
【8月2日】感染者は71名に増え、うち4名の死亡が確認された。これまでに55名が入院した。当局は感染源の可能性がある場所で水質検査を実施し、調査した17の冷却塔のうち病院やホテルなどの建物5棟でレジオネラ菌の陽性反応が出た。2日までにこの5棟の設備の洗浄などの対策が完了した。
【8月3日】死亡者が3名増えて計7名となった。同日に保健当局による説明会が行われたが、住民からはその対応に懸念と不満があらわになった。市当局からは、感染者数は81名に増えたことも発表された。
死亡した7名はいずれも基礎疾患のある高齢者だった。入院者数は64名、うち28名は既に退院した。
【8月5日】死亡者が1名増え計8名となり、97名がレジオネラ症と診断された。このうち11名以上の患者がサウスブロンクス地区で確認されている。市当局によると、アウトブレイクはサウスブロンクス地区の冷却塔からの水飛沫によるものであるという。保健当局は、噴水・シャワーヘッド・プール・飲み水は安全であるとして市民に冷静さを保つよう強調した。市当局は、将来的な大流行を防ぐための新たな法令の策定を開始した。
【8月6日】先月始まったこのレジオネラ症アウトブレイクでの死亡者は10名となり、少なくとも感染者は100名となった。うち53名は治療を受け退院している。サウスブロンクス地区のレジオネラ症の発生を抑制するため、市保健当局は市内のすべての建物にある冷却塔について、今後2週間以内に消毒を実施するよう命令を下した。手順として、今後2週間以内に環境調査員による調査を実施し、さらにレジオネラ菌による汚染が無くても消毒を実施することとした。違反者は罰するという。
市長は冷却塔の規制を強化するために法の立案を行う予定。またニューヨーク州知事は、州の保健局が州内の対象となるすべての建物の検査を行うと発表。民間が所有・管理する建築物については、無料の検査を10月まで実施するとした。
【8月8日】市当局ではアウトブレイクは沈静化しつつあると表明しているが、感染報告は7名増え、合計108名となった。サウスブロンクスはこのアウトブレイクのグランドゼロ(爆心地、中心地の意)となり、細菌は現在、合計10か所の建物で発見されている。先月始まったこのアウトブレイクの発生原因は不明である。
市と州の双方のチームは冷却塔を持つブロンクス地区の建物を確認するための緊急調査を実施したが、これまでは、どの建物に冷却塔があるのかを把握していなかった。
【8月13日】市議会は、市内全ての冷却塔の定期検査を義務付ける法案を可決した。
【8月14日】市長はレジオネラ症アウトブレイクは収束に向かっていると述べた。当局は当初レジオネラ菌陽性と判定された5箇所の冷却塔のいずれかが発生源であったと述べ、それらはすでに消毒を終えているとした。
【8月15日】サウスブロンクス地区の感染者報告数は124名と発表された。感染者のうち94名は治療され退院しているが、いまだ18名が入院中で、死亡者は12名となっている。死亡した全員には基礎疾患があったという。
【8月18日】これまで12名が死亡し127名の感染報告がされたレジオネラ症アウトブレイクは、市の歴史の中で最大規模のものとなった。市長は、市内すべての冷却塔に検査と保守を義務付ける法律の法案に署名した。
これは州として冷却塔の保守のための初めての法律となった。当局は致命的なレジオネラ症に対処する強力な答えであると述べた。この法律は稼働している既存及び新規の冷却塔すべてについて登録・検査・消毒を義務付けている。
新しい法律では、冷却塔は毎年の認証と四半期ごとの検査を必要し、建物の所有者は保健省と精神衛生局へ細菌の増加状況を報告しなければならない。法の遵守を怠った場合は最高で2万5千ドルの罰金となる。
法律は直ちに施行され、建物の所有者は30日以内に冷却塔の登録を行わなければならない。
【8月20日】当局はレジオネラ症の感染源をオペラハウスホテルの冷却塔と特定した。この冷却塔は今月1日に消毒されている。地方、州及び連邦当局によると、死亡者も含めてアウトブレイクに関係した25名の患者から採取した検体の検査したところ、いずれもオペラハウスホテルの冷却塔で発見されたレジオネラの菌株と一致したという。保健局長官は午後の記者会見でアウトブレイクの終了を宣言した。
発生以来、レジオネラ症の報告数は128例となっているが、ほとんどの患者は病院を退院している。ここ3週間で新たな症例の報告はなく、8月3日以来アウトブレイクの地域で発症者を確認しておらず、感染症の潜伏期間も過ぎたと保健局長官は述べた。