長大医学部検出「レジオネラ・ナガサキエンシス」 29年を経て新種に認定
2011年12月19日(月)付の長崎新聞は、長崎大医学部第二内科の研究グループが1982年に検出したレジオネラ菌の一種が、29年を経て「Legionella
nagasakiensis(レジオネラ・ナガサキエンシス)」の名称で、米国の細菌学術誌の論文に新種として公表され、国際的に認められた、と伝えた。
米研究機関を通じて公表されるはずだったが、なぜか長年、埋もれた存在だった。
「名付け親」の佐世保市浜田町の佐世保同仁会病院長、齊藤厚さん(72)は「驚いた。ついに日の目を見た」と喜んでいる。
レジオネラ菌は入浴施設やビルの冷却塔で繁殖、飛散し肺炎を引き起こす。'76年、米国のホテルで開かれた在郷軍人(英語でlegionnaire)の集会で起きた200人以上の集団肺炎が発見のきっかけ。
これまで世界各地で発見された54種の名は「レジオネラ」と地名や発見者名の組み合わせでなっている。
齊藤さんが長崎大第二内科助教授だった1980年、肺炎患者から国内で初めてレジオネラ菌を検出し話題になった。
研究のため1982年にかけ全国の冷却塔や井戸などで採取した500本以上の水をサンプル調査。
郵送された容器の中には中ぶたの閉め忘れがあり、郵便局の郵便物が水浸しになることもしばしばで「局長さんが怒っては、謝りに行った」と懐かしそうに振り返る。
サンプルから検出した菌166株のうち、種が不明の27株の確認を研究機関の米国疾病予防管理センター(CDC)に依頼。
1987年、2株が新種と認められるとして命名を要請された。
一つはCDCに任せ、長崎市で検出したもう一つをレジオネラ・ナガサキエンシスと名付け航空便で書類を送ったが、2カ月後に受取人不明で戻ってきた。再度送ったが、何の連絡もないままだった。
だが今年2月、CDCから1通の電子メール。
「オーストラリアとアメリカでナガサキエンシスが検出された。論文の共同執筆者として校正をしてほしい」。
3月に米有力専門誌が論文を公表し、ついに新種名として公認された。
齊藤さんは、名称が長年、表に出なかった理由は不明としつつ「CDCに送った株は事務的なミスなどで保管されたままだったのだろう。
最近検出された菌と同じ種がないか調べたら、すでに存在していたことが分かり、公認に至ったのではないか」とみる。
「一つぐらい長崎の名が付いていいと思っていた。ずっと気になっていた」と齊藤さん。
研究に明け暮れた思い出とともに、認定の喜びをかみしめている。