トップページDr.イワサキの今月のお話し
Dr.イワサキ

Dr.イワサキプロフィール
岩崎輝雄(いわさき・てるお)

1933年島根県松江市生まれ。協会監事・学術部会代表幹事/北海道大学 健康・予防医学 教育学博士/健康評論家。
温泉健康法として「クアハウス」、森の健康法として「森林浴」を発案、企画・運営指導に携わる。その間、一貫して厚生省、農水省、環境省の補完事業を担当。レジオネラ菌対策、シックハウス対策にも係わっている。
著書に「温泉と健康」(厚生科学研究所)、「クアハウスの健康学」(総合ユニコム社)、「森林の健康学」(日本森林技術協会)などがある。

Dr.イワサキの今月の水のお話し
協会のご意見番「Dr.イワサキ」こと岩﨑教授が、ちょっと気になること、不思議に思うこと、愉快な出来事などなど、毎月楽しい内容をお話ししていきます。

Vol.8◆“寿司”など外国での和食文化普及には厳しい衛生管理を

 食文化の違いが国際争議の種となっているのが捕鯨問題だ。アメリカがかつて、黒船で日本開港を強要した動機は日本海沿岸の捕鯨活動に必要な石炭積み込み基地として港を開かせることだったが、鯨油が石油に転嫁すると急に捕鯨反対の先頭に立つといった矛盾行為はその歴史に余りに多い。
 食文化の違いは民族の先祖が食習慣としていた動植物の保存と活用にあり、尊重と敬意を払うことすれ、情感で捕獲妨害行為に走るとはかなり無理がある。
 同じことが実は日本の代表的料理・寿司にも言える。外国で普及を進める日本人寿司職人のあまりに無頓着な人が多いこと。常温でも腐敗しやすい魚肉、特になまの状態の魚介類を素手で触れるどころか、こね回す調理法は欧米人には怪奇で、不衛生かつ原始的と戦後の国際観光接遇会議で議論の的であったことを思い出す。
 最近では北京の寿司屋での当局による抜き打ち調査で、多くの不衛生データがあったとの報道もある。
 問題は素手や調理服の消毒、ネタの腐敗度や鮮度の可視判別能力と、日本での調理現場以上に外国での調理場では、まな板の素材なども含め、特段の衛生的な指導・配慮が必要である。日本の寿司店は鮮度維持と各種バクテリアを防ぐ自然素材や氷を敷いたネタ陳列棚の殺菌併用の照明器具など、伝統で培った衛生管理が随所に散りばめられている。安心安全は “握られた寿司”に盛られたガリ、杉のまな板を頻繁に清水で洗い流す清潔さの上での調理にあると理解して欲しいのだ。
 同時に、西洋・中華料理にはない、お客が素手で食べる作法もやはり日本的な“通(つう)”“粋(いき)”な作法であるが、外国ではオシボリ一本ではダメで、食前に水道で手を洗うくらいの徹底した準備を強要しよう。
 それぐらい食事の伝統文化は厳しいはずだが、筆者の見たところ、どこの国であれ、食事前の手の衛生配慮は劣悪と理解している。日本人ほど手を洗い、拭く国民はないようだ。小生は国際経験からハンカチの使用具合で衛生文化度が判る、との意見の持ち主だ。貴方のハンカチは綺麗ですか?
 それはともかく、久しくお目にかかっていないオオトロが食べたい気分になってきた。たまには奮発して女房孝行でもしようかなと思うこの頃。もちろん“粋”で衛生的な日本の寿司屋でね。
 ではまた。                  

(1003-008)